ところてんのブログ

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日本シリーズも終わったことだし、この機会に乗じてクライマックスシリーズ(CS)を擁護する

 2020年の日本シリーズは、2年連続のスイープという形で福岡ソフトバンクホークスの4連覇で終わった。「ホークスが強すぎる」だの「セパの格差」だの色々言われているが、私はこれを機会にクライマックスシリーズの存在を擁護してみたい。今まで「CS不要論」は様々な人が言っていたが、今回絶好の反撃のチャンスだと思い、ここに記すことにした。これから述べる私の主張は1本の軸がある。「ペナントレースはいびつな形」であるということだ。

1.そもそも「1つの勝利」の価値って?

1.1 5回コールドも、延長12回も同じ「1勝」

 現在の野球は、9イニングでの得点が多いほうの勝ち、というルールである(国際試合などで7イニング制が提案され、それに対する反発もあったりする)。しかしながら、悪天候の際には5回まで試合が進んでいればコールドゲームが成立する(逆にそれ以前ならノーゲーム。5回の扱いに関しては後攻チームがリードしているか否かで扱いが変わるが、それについては割愛)。そして、9回で決着がつかなかった際は、延長を12回まで行い、それでも同点なら引き分けとなる。今年はコロナの影響で延長は10回まで、以前東日本大震災の際は「3時間半ルール」が存在したが、いずれにしても中途半端に延長を行うのである。

 MLBのようにいっそ延長ナシで決着がつくまで行ったほうがまだ筋が通っているとも思うが、選手の疲労や興行的な側面から中途半端な延長戦の存在自体には理解ができる。しかしながら、5回コールドも、通常通り9回で終わっても、延長で決着がついても、全て同じ「1勝」とすることは、1勝の価値に歪みが生じていると見ることはできないだろうか?その歪みの積み重ねを無視して「百数十試合の価値」の存在を訴える人は、言い方が悪いが私にとっては詐欺師にしか見えない

1.2 「優勝チーム≠最多勝利チーム」

 ここでクイズ。2010年、2014年、この2年のパシフィックリーグ優勝チームはどこだろう?

 答えは福岡ソフトバンクホークス。では、この2年でパリーグレギュラーシーズンで最も勝ったチームはどこ

 そう、答えはホークスではない。2010年は埼玉西武ライオンズ、2014年はオリックスバファローズが最も勝ったチームだった。何故このようなことになったのか?

 答えはシンプル。「勝率」で順位を決めているから。この文言だけなら真っ当なように見えるが、この勝率の計算では、引き分けが分母から除外されることになる。するとどうだろう、勝率5割以上の状況においては1つの勝利より2つの引き分けのほうが価値が高いということになるのだ。そして5割未満ならその価値が逆転する。やはり1勝の価値がブレてはいないだろうか?

 極論を述べれば、1勝142分なら勝率10割で文句なしのリーグ優勝である。このような成績は逆にスゴイとは思うが、このチームをリーグで1番強いと胸を張って言える人はどれほどいるだろうか。

2.最強のチームが優勝できるとは限らない?

 「ワンナウツ」という漫画でも同じ内容が書かれているが、カモの球団をつくればリーグで最も強くなくても優勝できてしまう。満遍なく他の5球団から2つずつ勝ち越すより、他の4球団から1つずつ負け越しでも特定の球団に15勝ち越したほうが貯金は多い。現実でもあり得ない内容ではなく、今年ロッテはオリックス戦の貯金だけで2位につけた。終盤でも変わらずソフトバンクをカモにし続けることが出来たなら、結末は変わっていたかもしれない。まあ10月に現地観戦してこのチーム状態では無理だと途中で悟ったが......

3.「シーズン通して戦った」、コレ本当?

 そもそも、チームの選手やスタッフはシーズンを通して戦っているのだろうか?「当たり前だろ!」と言う人もいるかもしれないが、では途中トレードで加入した選手はどうなのか?途中加入の助っ人外国人は?途中交代した監督・コーチは?全て最後の結果へ向けてのアクションだが、「シーズンを通して」とはズレが生じる。ファンにとっては確かに応援するチームはシーズンで戦っているかもしれないが、現場の全てがそうとは限らない

4.「失速型」優勝の落とし穴

 今年のセリーグ覇者、読売ジャイアンツは開幕から好調を維持し、2位以下を大きく引き離し9月半ばには既にマジックを点灯させた。

 一方のパリーグ王者福岡ソフトバンクホークス。昨年までの強さは勿論健在だったが、序盤はリリーフ陣を確立しきれなかったこともあり2位以下との差はほとんどなかった。8月にはロッテに首位の座を一時明け渡し、巨人がマジックを点灯させた9月中旬もソフトバンクとロッテとのゲーム差は1〜2で推移していたことからも、決して楽なシーズンではなかったと言えよう。

 さて、10月以降の両チームはどうだったか。巨人は失速。中盤までの貯金が多く、最終的には2位阪神に7.5ゲーム差をつけて優勝したが、10月以降のレギュラーシーズンに限れば借金5。明らかに調子下降気味で、ひょっとしたらセリーグで1番強いチームではなかったかもしれない

 対するソフトバンクは10月以降は快進撃。24勝6敗1分と驚異の成績を残し、ここまで相性の悪かった2位ロッテとの直接対決もことごとく勝ったほか、ロッテのツインターボを彷彿とさせる失速もあり終わってみれば14ゲーム差のぶっちぎり。ホーム福岡でリーグ優勝、CS突破と2度ロッテをはね除けた。

 そんな絶好調のソフトバンクと、失速気味の巨人が日本シリーズでぶつかったのだからこのような結果になるのも何ら不思議ではない。勿論チームの地力も感じたが(一つ一つのプレーに、これがホークスだよなあと私も改めて感心した)、ここまで一方的なしらけたシリーズになるくらいなら、「百数十試合の総合力」なんて果たして意味があるのか

5.まとめ

 短期決戦で総合王者を決めるアメリカの4大スポーツはどれもプレーオフ制度が整っている(とくにNBAのフォーマットは、日本のCS反対派野球ファンは泡を吹いて倒れるのではないだろうか)。一方、Jリーグなどそもそもトップディビジョンが一つしかないリーグではプレーオフは浸透しなかった(Jリーグは過去に前後期制を2度行ったが、結局やめている)。

 NPBも、日本シリーズが短期決戦である以上、ペナントレースの存在がいびつである以上、クライマックスシリーズのようなプレーオフ制度の存在は十分に意味のあるものだというのが、今回私が言いたいことである。